[HOME] [LINK]
巨勢博士


「坂口安吾」が描く“博士”ではないが“博士”と呼ばれる名探偵。
巨勢博士(こせはかせ)
十七の時、矢代寸兵という文士に弟子入りした。大学では美学を勉強した。
「博士でもなんでもない。」「若年の二十九である」(不連続殺人事件)
「五尺そこそこの小男で、マン丸いクリクリした顔、愛嬌のよい二十三四の小僧ッ子にしか見えなくて、
喧嘩となると素早やそうだが大探偵の面影などはどこにもない」(不連続殺人事件)
「我々は彼の探偵手腕を絶対的に認めるから、この不勉強の怠け者を敢て博士と尊称することにしているが、
奴めは肩のこる学問は知らない代りに、下らぬものなら、講釈本、落語全集等の高級品から
下は猥本、映画雑誌、相撲の番付、そういうものは徹夜で耽読するから、
下らぬものならなんでも知らぬというものがない」(不連続殺人事件)
不連続殺人事件の後、有楽町駅に近いビルの一室で探偵事務所を開く。


巨勢博士の事件簿
No.事件名初出誌収録本(出版年)
1 「不連続殺人事件」(長編)*1 「日本小説」
昭和22年8月号〜23年8月号
「不連続殺人事件」春陽文庫('56)
「定本 坂口安吾全集 第10巻 小説 VII」冬樹社版('70.11)
「不連続殺人事件」広済堂ブルーブックス('73.02)
「不連続殺人事件」角川文庫('74)
「日本探偵小説全集 (10)」創元推理文庫('85.10)
「坂口安吾全集 第11巻」ちくま文庫('90.07)
「日本推理作家協会賞受賞作全集3 不連続殺人事件」
双葉文庫('95.05)
「坂口安吾全集06」筑摩書房('98.07)
2 「復員殺人事件」(長編)*2 「座談」
昭和24年8月号〜25年3月号
「樹のごときもの歩く」東京創元社('58.06)
「定本 坂口安吾全集 第10巻 小説 VII」冬樹社版('70.11)
「復員殺人事件」角川文庫('77.10)
「坂口安吾全集 第11巻」ちくま文庫('90.07)
「坂口安吾全集08」筑摩書房('98.09)*3
3 「選挙殺人事件」(短編) 「小説新潮」昭和28年6月号 「定本 坂口安吾全集 第10巻 小説 VII」冬樹社版('70.11)
「不連続殺人事件」広済堂ブルーブックス('73.02)
「名探偵13人登場」KKベストセラーズ('75)
「能面の秘密」角川文庫('76.11)
「別冊文芸読本 日本の名探偵」河出書房新社('80.02)
「日本探偵小説全集 (10)」創元推理文庫('85.10)
「坂口安吾全集 第11巻」ちくま文庫('90.07)
「坂口安吾集」リブリオ出版('97.10)
「坂口安吾全集14」筑摩書房('99.06)
4 「正午の殺人」(短編) 「小説新潮」昭和28年8月号 「定本 坂口安吾全集 第10巻 小説 VII」冬樹社版('70.11)
「不連続殺人事件」広済堂ブルーブックス('73.02)
「能面の秘密」角川文庫('76.11)
「坂口安吾選集 第8巻」講談社('82.11)
「坂口安吾全集 第11巻」ちくま文庫('90.07)
「坂口安吾全集14」筑摩書房('99.06)
*1・・・昭和24年度の第二回探偵作家クラブ賞を受賞
*2・・・「座談」廃刊とともに連載が中止となり未完の作品になった。
作者没後に高木彬光が「樹のごときもの歩く」(「宝石」昭和32年12月号〜33年4月号連載、
2ヶ月休んで最終回は6月号に掲載)と改題して続編を書き継ぎ昭和33年に刊行された。
(「宝石」昭和32年8月号〜11月号には坂口安吾の遺稿が掲載された。)
*3・・・「坂口安吾全集08」筑摩書房に収録されている「復員殺人事件」(樹のごときもの歩く)には
「第二十八章 龍教信者の殊勲」の後に高木彬光の「挑戦の言葉」が載っている。

高木彬光は坂口未亡人から「復員殺人事件」で坂口安吾が意図していたものについて教えてもらい続編を書きました。以下にそれを表記します。ネタバレになるので背景色と同じ色で見えないようにします。見たい場合は、ドラッグして見てください。詳細は「樹のごときもの歩く」東京創元社の「あとがき」または「坂口安吾全集08」筑摩書房の「『樹のごときもの歩く』懸賞選評」に詳しく載っています。
犯人は美津子の単独犯行
樹のごときものとは薪を背負った久七
動機は財産の横領
最初電話をかけた女は、美津子の変装
紛失したピストルの行方が、事件解決の決め手となる



『UN-GO』について
坂口安吾の『明治開化 安吾捕物帳』を原作とした『UN-GO』(アンゴ)というアニメーション作品が2011年10月から12月にフジテレビにて放送されました。
また、TV放送中の2011年11月に劇場版『UN-GO episode:0 因果論』が2週間限定で上映されました。
これら一群の作品は『明治開化 安吾捕物帳』を原作としていますが、設定を大胆にアレンジして制作されています。(物語の舞台を近未来にしたりするなど)
これらは『明治開化 安吾捕物帳』だけでなく安吾の他作品も原案のひとつとして利用しています。
第8話『楽園の王』は原案を『明治開化 安吾捕物帖 "愚妖"』『選挙殺人事件』に、劇場版『UN-GO episode:0 因果論』は『復員殺人事件』など。
なお、巨勢博士または、それに該当する人物は登場していません。



参考文献およびパロディ,パスティッシュ
No.著者、編者など作品名及び特集名内容収録誌
1 江戸川乱歩・著 「不連続殺人事件」を評す 評論 「宝石」昭和23年11月12月合併号
「坂口安吾選集 第8巻」講談社('82.11)
「江戸川乱歩コレクション 3
一人の芭蕉の問題 日本ミステリ論集」
河出文庫('95.04)
2   「巨勢博士紹介」 紹介 「別冊文芸読本 日本の名探偵」
河出書房新社('80.02)
3 池内 紀・著 「解説 巨瀬博士の周辺」 解説 「坂口安吾全集 第11巻」
ちくま文庫('90.07)
4 野崎六助・著 「夜の放浪者たち 第一〜三回
坂口安吾『復員殺人事件』(前篇・中篇・後篇)」
解説 HMM('05.01、'05.02、'05.03)


更新履歴
2004.11.27「参考文献およびパロディ,パスティッシュ」に「夜の放浪者たち 第一回」を追加
Amazonへのリンクを追加
2005.01.29「参考文献およびパロディ,パスティッシュ」に「夜の放浪者たち 第二〜三回」を追加
2012.01.02「『UN-GO』について」を追加


[HOME] [LINK]